リースバックは、将来的に自宅を買戻すことを想定して活用もできます。この場合、売買契約に買戻し特約を付帯させることで、買戻す権利が法律的に保証されます。
買戻し特約を付帯する場合は、トラブルを防止するためにも当事者双方が特約内容についてしっかり理解しなければなりません。
今回は売買契約の買戻しについての基本的な知識やトラブル事例について紹介します。
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リースバックの買戻しとは?
リースバックを利用する際は、建物を対象とした売買契約と賃貸借契約(リース契約)の二つの契約を同時に締結することになります。買戻し特約は、このうち売買契約のほうに付帯される特約です。
まずは買戻し特約が法的にどのような構成になっているのかについて解説します。
リースバックの買戻し特約
“買戻し”という言葉から、数年後に売主と買主があらためて売買契約を締結して買いなおすものだとイメージされがちですが、民法規定における買戻し特約は意味合いが少し異なります。
民法579条の規定では、事前に定められた金額を売主が買主に返還することで契約を解除することができるという「解除権留保」という考え方が基礎となっています。
売買契約を白紙に戻して対象不動産を手元に戻すという趣旨なので、買戻すための売買契約を新たに結ぶ必要はありません。また、解除する権限は売主側が持っているため、売主は買主に対して解除に必要な代金を支払えば、一方的に対象不動産を買戻すことができます。
再売買の予約
買戻し特約とは別の方法で不動産を買戻す権利を留保する手段として、民法556条に基づく「再売買の予約」を締結するというケースもあります。
原売買契約を解除して対象不動産を手元に戻す買戻し特約とは異なり、再売買の予約は、将来的に新たに売買契約を結びなおすことを約束する契約です。再売買の予約契約を締結した場合、売主が予約完結権を行使することで正式に売買契約が成立することとなり、当事者双方に権利義務が発生することになります。
将来的に対象不動産を手元に戻すという意味においては、買戻し特約も再売買の予約も同じ効果があります。しかし、リースバック契約時にどちらの趣旨になっているかは確認しておいた方がよいでしょう。
買戻し特約の期間
買戻し特約の期間については、原則として売主と買主の協議のもと双方で決めることができます。しかし、合意があれば何年でもいいというわけではありません。
民法580条で「買戻しの期間は10年を超えることはできない」と規定されており、これよりも長い期間の特約を結んでしまうと自動的に10年という扱いになります。
なお、再売買の予約については期間の上限の定めはありませんが、予約完結権が消滅時効にかかってしまうことがあります。買戻す権利が何年間保証されるのかという点についてはリースバックを提供する事業者(以下、リースバック事業者)に確認するようにしましょう。
買戻し特約には登記が必要?
万が一、リースバック事業者が対象不動産を第三者に転売してしまった場合、登記がなければ売主はその第三者に対して買戻す権利を主張できなくなってしまいます。
権利が主張できないとなると、対象不動産を手元に戻すということができなくなってしまい、権利関係上のトラブルに発展します。
このような争いを避けるため、買戻し特約を結んだ際にはその内容を登記しておくことがベストです。買戻し特約に基づく解除権、再売買の予約完結権のどちらも登記をすることが可能です。権利関係上のトラブルを回避するために、買戻しに関する登記手続きの有無についてリースバック事業者に確認するようにしましょう。
リースバックでは、住宅ローンを使って買戻すことはできる?
リースバックで売却した不動産について住宅ローンを利用して買戻しができるかどうかは、各金融機関の判断により異なります。
ではどのような場合に金融機関が、消極的になるのでしょうか。
親族間など近しい人が買い戻す場合
一般的に銀行などの金融機関は、親族間で売買するケースや、元所有者が買戻すようなケースにおける住宅ローンの融資については消極的になる傾向があります。これは、住宅ローンによって融資された資金が間接的に別の目的で使われてしまうことへの懸念があるからです。
親族間での契約になる場合、不透明な部分が生まれる可能性があり、オーバーローンを組む可能性が生まれます。
オーバーローンとは、住宅費用以上のローンを組むことです。住宅ローンは、ほかのローンと比較して金利が低いため、悪用されてしまうことがあります。
このオーバーローンを組まれないために、金融機関が住宅ローンに消極的になる場合があります。
買戻し特約を付帯するのであれば、住宅ローンに頼らずに代金を支払う状況を想定しておいたほうが望ましいです。しかし、現実的に自己資金での買戻しが難しい場合は、住宅ローンに申し込んでみる価値はあります。事前に各金融機関の傾向などの情報を収集しておくとよいでしょう。
リースバックの買戻しでよくあるトラブル
リースバックの買戻し特約が原因でトラブルに発展してしまうこともあります。
ここからは、ありがちなトラブル事例を紹介します。
不動産相場に著しく変動が生じた
不動産の価格は値動きがあるため、リースバック契約から数年経過したときに地価が著しく低下してしまうということも考えられます。
買戻しの代金はリースバック契約時点の市況を基準にして算出されるものなので、地価が下がってしまうと買戻しの際に相場よりも高い代金を支払わなければならないことになってしまいます。反対に、不動産価格が高騰した場合においては、リースバック事業者側にリスクがあるということです。
このようなことから、買戻し特約を結んだ後の不動産の価格変動に起因して代金増額・減額に関するトラブルに発展してしまうケースがあります。
しかし、当事者で合意して決めた買戻しの代金を後から変更するということは、原則としてできません。買戻し特約を検討するにあたっては、当事者双方が不動産の価格変動によるリスクがあることを理解しておかなければなりません。
買戻しに必要な金額が高い
リースバックで売却した住宅を買戻すときの金額は、売却価格の1.1~1.3倍くらいが相場といわれています。また、リースバック事業者によっては、本体価格とは別で事務手数料などの諸経費が発生することがあります。
買戻しに必要な金額が思っていたよりも高いということで、トラブルになるケースもあるようです。
一度買戻しの金額を決めると、基本的には後から変更することができなくなります。リースバックを契約するときに、買戻しに必要な経費の総額を把握しておくようにしましょう。
資金が準備できず買戻しができない
資金が準備できずに買戻しができない状況のまま期間が経過してしまった場合、それ以降に資金が調達できたとしても、契約上は買戻しができなくなってしまいます。
リースバック契約時は支払いができる想定だったものの、いざ買戻しの時期になったときに資金が準備できないということにならないよう、資金調達の方法についてあらかじめ計画を立てて買戻し特約を付帯する必要があります。
将来的に自宅の所有権を手元に戻したいという人にとって、買戻し特約は安心のシステムの一つです。
一方で、買戻し特約の法律的な趣旨や性質を理解していなければトラブルに発展してしまうおそれがある事に注意しつつ、買戻すための資金の準備についても計画的に検討する必要があります。買戻し特約の内容や条件はリースバック事業者によっても違いがありますので、親身になって相談に応じてくれる会社を選定するというのも大切なポイントの一つです。
まずは複数のリースバック事業者に問い合わせて、契約内容について詳しく聞いてみましょう。
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