生活保護は、最低限の生活に必要な収入を得ることができるまで国が補助をする制度です。生活保護を受けようと思っている人の中には、持ち家がある人もいるでしょう。持ち家があると生活保護は受けられないのでしょうか。
今回は、生活保護を受けたいと思っているが持ち家がある人に向けに、持ち家があっても生活保護は受けられるのか、そして持ち家を失わずに生活保護を受ける方法はあるのか、解説していきます。
借金ではない資金調達、リースバックって?
生活保護の適用条件は?
まずは、生活保護の適用条件について見ていきます。
大まかに分けると5つの条件があります。
働くことができない
生活保護は病気や怪我によって働くことができない人が対象です。怪我や病気などの診断書を福祉事務所に提出し、働ける状態ではないと認められれば、生活保護を受けられます。
就業能力や就業機会があるにも関わらず働いていない人は、生活保護の対象とはなりません。日本では、仕事がない人のためにハローワークで就業機会を得るサポートがされています。特別な理由がないのであれば、ハローワーク等を利用し就業機会を見つけることが必須となるのです。
また、病気や怪我が回復し、通常通り働ける状態になったのに働こうとしないといった場合には生活保護の受給を打ち切られることがあります。
最低生活費に満たない
厚生労働省により、国が定めた最低生活費の基準が定められています。この基準を超える収入がある場合には生活保護を受けることはできません。
収入とは給与所得だけではなく、以下のものが含まれます。
- 年金
- 生命保険等の返戻金
- 失業保険や傷病手当などの手当
- 資産売却によるお金
- 退職金
- 親族からの仕送り
また、家族が受け取っている世帯収入もこれに含まれます。
公的融資制度や年金制度をこれ以上利用できない
国は、生活保護の制度以外にもさまざまな公的融資や年金制度を用意しています。
- 老齢年金
- 障害者年金
- 労災保険
- 求職者支援制度
- 雇用保険失業給付
- 生活福祉資金貸付
- 住居確保給付金
- リバースモーゲージ
- 母子父子寡婦福祉資金
生活保護は、生活困窮者の最後の砦です。そのため、上述のような制度を活用できる場合には対象外になります。あらゆる制度を検討した上でなお、利用できる制度がなく収入が最低生活費の基準に満たないという場合に、対象となります。
身内に扶養してくれる人がいない
扶養とは親族から経済的に援助をしてもらうことです。民法上では、直系の親族および兄弟姉妹、夫婦に対しては扶養義務があるとされており、扶養義務は生活保護に優先されます。つまり、親族には生活保護を受けたいと思っている身内の生活を支える義務があるということです。
しかし、この義務は拒否をすることができるものであり、扶養義務の対象者が扶養することを拒否した場合などにおいては、生活保護の適用条件を満たしていると認められます。
生活に必要のない資産を持っていない
福祉事務所のケースワーカーに、所有する資産が最低限の生活を送るうえで不要であると判断されると、まずはそれらを売却するよう促されます。
資産には、以下のようなものが該当します。
- 高級車
- 別荘
- 貴金属やブランド物などの高級品
- 2台目以降の携帯やパソコン
- 使用していない土地
- 貯蓄性のある生命保険
- 株式
- その他
資産は売却し、お金に変えたうえでなお十分な生活を送れない状況で、はじめて生活保護の対象になります。
生活保護を受けるには持ち家を売却しなくてはならない?
資産について先述した通り、もしも持ち家が必要のない資産だと判断されてしまったら、原則としてそれを売却しなくてはなりません。
しかし、以下の条件に受給者もしくは持ち家が該当する場合は、持ち家を売却しなくとも生活保護が適用になるかもしれません。
持ち家売却の判断が分かれるケース
3つ紹介します。
住む場所がなくなる場合
生活保護は日本国憲法第25条による「健康で文化的な最低限度の暮らし」を支えるためにあります。所有物件を売却させ、現金化させたとしても受給者の住む場所がなくなってしまったら生活保護を受ける前の生活よりも劣悪な環境になってしまう可能性があります。
住む場所がなくなる場合には持ち家の売却をさせずに生活保護の受給を認める可能性があります。
ローンを完済している場合
前提として、生活保護の受給により借金を返済することは認められていません。そのため、ローンがある場合には生活保護の対象ではありません。多額のローンが残っている不動産を所有している場合には売却が必須です。
一方で、ローンを完済している、もしくはローンの残債が少額の場合には、賃貸に住み替えるよりもそのまま持ち家に居住させた方が良いと判断される可能性があります。
判断のポイントは、このまま持ち家に居住し続ける場合と賃貸に住み替える場合のどちらの方が支出が少ないか、です。持ち家を売却しない方が良いと判断された場合には、持ち家に住み続けることができます。
資産価値が低い場合
所有物件を売却した現金は生活費に充てることを目的としています。しかし、現金が少なければ売る意味がありません。厚生労働省によると、売却によって2,000万円以上の現金化を見込める持ち家に関しては、そのまま住み続けるよりも、現金化して賃貸等に住み替えたほうが価値が高いとのことです。
あくまで2,000万円というのは概算であり、売却金額に決まりはないようです。また、その地域の地価などをふまえて判断されます。売却すべきか否かの明確な基準はありませんので、一度地域の福祉事務所に相談しましょう。
生活保護で持ち家があると競売になる?
競売とは、裁判所管轄のもと該当不動産を売り払うことです。債務者がローンの返済をできなくなった際に、融資元である金融機関は最終手段として裁判所を通じて不動産を売却し、売却によって得られた代金からローン残額を回収する手続きを行います。
前述の通り、生活保護を受けるためには必要のない資産を売却する必要があります。しかし、対象の物件が、最低限度の生活を送るために必要な資産として所有が認められたのならば、生活保護を受給することを理由に競売にかけられることは、まずないでしょう。
持ち家があると生活保護の支給額は変わる?
先述のように、持ち家がある場合でも生活保護を受けられる可能性があります。しかし、受けられたとしても、持ち家がない場合より支給額は下がるでしょう。なぜなら、生活保護の支給額は受給者の住んでいる場所や家族構成、居住先の条件などを項目ごとに算出し決定するためです。
生活保護には8種類の項目があります。扶助の種類を具体例と共に紹介していきます。
扶助の種類 | 具体例 |
---|---|
生活扶助 | 食費、衣服費、日用品代、光熱費 |
住宅扶助 | 家賃、引っ越し費用、修繕費、更新料 |
教養扶助 | 教材費、給食費、通学費 |
医療扶助 | 薬代、手術代、通院費 |
介護扶助 | 介護サービス |
出産扶助 | 出産費 |
生業扶助 | 就職支援費用、高校授業料 |
葬祭扶助 | 葬式費用 |
参考:生活保護制度とは、どのような制度ですか? |日本司法支援センター 法テラス
生活保護は、これらの扶助により受給者が健康で文化的な生活水準を維持することができる最低限度の生活を保障しています。そのため受給者はそれぞれの扶助に該当する分だけ支給されます。
持ち家がある人が注目したいのは住宅扶助です。住宅扶助は具体例を見てもらえば分かるように賃貸を前提にした扶助です。つまり、持ち家に住んでいる場合は住宅扶助を受けることができません。
たとえば、東京都23区域内の賃貸物件に2人で暮らしている場合は、住宅扶助として64,000円の支給が受けられます。しかし、家を所有している場合は、この住宅扶助基準額の64,000円分が支給されません。
参考:生活保護「住宅扶助基準額」の見直しについて|東京都福祉保健局
住宅扶助基準額は各地域によって異なるので、該当地域のホームページを確認し、福祉担当に相談するのが良いでしょう。
生活保護のために持ち家を売却しても、そこに住み続ける方法がある?
実際には、持ち家の売却をせずに生活保護を受けることは厳しいでしょう。
そこでおすすめしたいのが、リースバックです。
リースバックとは、所有の物件を売却することで資金を手に入れ、当該物件に賃貸として住み続けることをいいます。慣れ親しんだ物件に住み続けることができ、その上、生活費として使うことができる現金を手に入れられます。
本来ならば持ち家を売却して引っ越せば、いろいろなコストがかかります。リースバックを利用することで、賃貸物件への引っ越し費用も抑えることができます。
居住先を失わずに、生活保護の対象となる可能性があるリースバック。専門の事業者に相談してみてはいかがでしょうか。
提供事業者によって条件が違うリースバック。一括問い合わせで比較をしましょう!