目先の売上が急激に落ち込んだ場合、まずは運転資金に困ることになります。運転資金がないと、入金の予定はあるのに、今すぐ必要な経費が支払えず事業が破綻する、いわゆる黒字倒産の危険さえあります。
今回は、運転資金の調達方法についてみていきます。
運転資金を銀行から融資してもらうには
コロナ禍にあって、事業不振から資金不足に陥る企業・事業主も多いことでしょう。運転資金が不足したとき、多くの人がまず頭に浮かぶのは「銀行から融資を受けられないか」です。
しかし、融資を受けたいという企業が無数にあるなかで、銀行としても、求められるままに貸し出すということはありません。そのため、銀行から借り入れをしたいと思ったら相応の借り方やコツをおさえておく必要があります。
運転資金の「借入理由」をどう伝える?
事業資金の借入理由を銀行にどう伝えるかという点がとくに重要です。単に「運転資金が不足しているので融資してほしい」だけでは、なかなか受け入れられません。
また、借入理由で嘘をついてはいけません。実際の使いみちとは違う内容で申請して融資を受けると、それにより銀行からの信用を失い、今後の融資に影響することがあります。
そうならないために、自分の事業において、今、何のために資金を必要としているのかを、事業主自身が正しく理解しておくことが大切です。
事業資金は、設備資金と運転資金に分類できます。
設備資金は土地・建物、車両、機械など、長期的に使用する設備に投資するためのお金です。対して、運転資金とは日々の事業に必要な資金をいいます。光熱費や人件費などです。
金融機関では、運転資金を、次のように細かく種類を分けてとらえています。
経常運転資金 | 買掛金や支払手形の決済など、日々の支払いのための資金 |
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増加運転資金 | 売上の増加にともなって必要になる資金。光熱費や人件費など |
減少運転資金 | 売上が減少したり、事業を縮小することで必要になる資金 |
季節運転資金 | 一定の季節に必要になる資金。賞与や、季節的に発生する仕入れの費用など |
設備未払金決済運転資金 | 設備資金の未払い分を決済するための資金 |
今、必要としている運転資金が、以上のうちどれにあたるものか、また、なぜ必要になっているのか、という点を、銀行に対してきちんと説明できるか。それが、融資を受けるためのコツと言えます。
運転資金の「借入期間」はどれくらいが適当?
運転資金の借入期間はどれくらいが適当なのでしょうか。
一般的に、設備資金は10年以内、運転資金は7年以内が目安とされています。普通に考えれば、返済までの期限が長いほど、借り手としてはありがたいものです。そのため、「できるだけ長く借りたい」と思ってしまいがちです。しかし、借入期間が長いほど支払う金利の総額が多くなることに注意しましょう。結果的に負担は大きくなるわけです。
「据置期間」を設ける場合もあります。据置期間とは、利息のみを返済する期間のことで、一回の返済額を抑えたい場合に設定しますが、返済期間は伸びますので、総額での利子負担はやはり大きくなります。
また、追加融資を受けたい場合も、追加するためにはある程度以上の返済を終えている必要があるため、借入期間は短めのほうが良いでしょう。
いずれにせよ、資金の借り入れでは、返済計画が大切です。
ムリな計画を立てて、結局返済できないのでは本末転倒です。これには唯一の正解はなく、できれば税理士や会計士など専門家の意見も聞いて考えるのがいいでしょう。
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運転資金を借入できないケースとは
運転資金を銀行から借り入れようとしても、審査を通らず、融資を受けられないこともあります。
基本的には、
- 自己資金が不足している
- 借入の理由が不明瞭
- 返済計画に無理がある
- すでに多額の借り入れをしている
- 税金や社会保険料の滞納がある
といった点が審査上、問題になるケースです。金融機関としても、返済が滞るリスクがあれば、貸そうとは思いません。
また、風俗関係、金融関連など、事業内容が融資の対象外とされることもあります。
それらに加えて、事業主の信用情報が問題になる場合もあります。
- クレジットカード、キャッシングなどの返済が滞った履歴がある
- 債務整理をしたことがある
- 消費者金融の借入残高がある
- 個人の税金などの滞納がある
といった場合です。
借入できなかった場合、運転資金を調達するには
融資を受けるのが難しいとなった場合、運転資金をどのように調達すればいいのでしょうか。
資金調達は、大きく3つに分類できます。
- デッド・ファイナンス
- エクイティ・ファイナンス
- アセット・ファイナンス
融資は、このうちデッド・ファイナンスにあたり、負債として資金調達することをあらわします。銀行からのいわゆるプロパー融資のほか、ビジネスローンや、公的融資などもここに含まれます。
対して、エクイティ・ファイナンスと呼ばれるものは、資本による資金調達、つまり、お金を借りるのではなく、出資してもらうという形です。
株式会社の第三者割当増資が代表的なものですが、ベンチャーキャピタルから出資を受けたり、最近はクラウドファンディングなども盛んです。
そしてアセット・ファイナンスとは、今ある資産を売却してお金に変えるという方法です。使っていない備品を処分する、無用な在庫を売却するといったもののほか、売掛金を現金化するファクタリングという方法もあります。
また、3種類の資金調達方法に含まれない方法として、公的な助成金や補助金を得るというのもあります。コロナ対策の持続化給付金などがそれにあたります。
事業用不動産を売却しても使い続けられる「リースバック」とは
アセット・ファイナンスの一種で、比較的、利用しやすい資金調達方法として不動産のリースバックがあります。
リースバックとは、所有する不動産を売却し、売却した不動産をリースしてもらうことでそのまま使用し続けるという方法です。個人向けに行われているリバース・モーゲージに似た仕組みですが、物件を最初に売却する点が異なります。
リースバックは、自宅や事務所、工場などを売却することで、その売却益として資金を得ることが目的です。
単に売却しただけだと、物件を手放すことになってしまいますが、リースバックは、売った自宅や事務所、工場を買主から再び借りることで、売却前と変わらず使い続けられるのがポイントです。
もちろん、以後は賃料を支払う必要がありますが、所有権は買主に移っていますので、固定資産税などの維持費負担はなくなります。物件をローンで購入し、返済をしていたという場合、契約内容によってはリースバックした後の賃料のほうがローン返済額より安くなるケースもあります。
物件の所有者が変わるだけで、使用することには何も影響しませんから、外部からはリースバックが行われたこともわかりませんし、仕事環境には一切変化がありません。当然、引っ越しを行う必要などもないわけです。
それでも、思い入れのある自宅や事務所、工場を売ってしまうのに抵抗がある人もいるかもしれません。しかし、任意売却と違い、リースバックなら、契約する会社によってはまた物件を買い戻すことも、不可能ではありません。
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