高齢者向けの金融サービスとして注目が集まるリバースモーゲージ。一戸建てを所有している人に向けたサービスとして紹介されることが多いですが、マンションを所有している人でも使うことはできるのでしょうか。
また、マンションを所有している人が資金調達したいときは、どんなサービスを検討すべきなのでしょうか。
目次
リバースモーゲージの概要と条件
マンションでの利用可否の前に、まずはリバースモーゲージについて説明します。
リバースモーゲージの基本的な仕組みをおさらい
リバースモーゲージとは、不動産を担保に、資金を借り入れるローン商品です。
大きな特徴は、リタイアした高齢者が自宅を担保に利用することを想定していることです。そのため、基本的には借入期間中は利息のみを返済し、借り入れた人が亡くなった時点で物件を売却して元金を精算するという仕組みになっています。
利用者の多くは、リフォーム資金や、リタイア後の豊かな暮らしを目的としています。それに合わせるようにして、近年は銀行が一般向けに、多様なリバースモーゲージ商品を提供しています。
いずれの商品も、一般的なリバースモーゲージち仕組みは同じで、亡くなった後に物件を売却することで一括返済することを前提とした借り入れです。
生存中は金利部分のみを返済する形が主流ですが、金利を元本に組み入れていくことで、生存中の返済の負担をなくしたものもあります。
自宅という資産を持つ人が、物件を今すぐ手放すことなく、住み続けながら、資金を調達できるのがリバースモーゲージのメリットです。
▽不動産担保型生活資金
実は以前から、老後の生活資金を調達することを主な目的とした公的サービスが存在しています。それが、地域の社会福祉協議会を通じて利用できる「不動産担保型生活資金」制度です。
特徴は、国や自治体が福祉的観点から提供しているということです。
リバースモーゲージ利用のための3つの条件とは
リバースモーゲージには、押さえておかなくてはならないポイントがあります。大きく、以下の3つの条件をクリアできないと、利用できません。
(1)推定相続人の同意があること
リバースモーゲージでは、借入人が亡くなった後、担保物件を銀行などに売却することが前提です。
子どもなどの相続人は、家を相続できないので、あらかじめその同意がとれていることが、原則として必要です。
(2)資金の使途が条件に合うこと
リバースモーゲージには、一部のフリーローンを除き、使途に制限があるものが多いです。とくに公的な機関が提供するリバースモーゲージには、基本的に用途制限があります。
住宅のリフォーム資金などが代表的ですが、そうした条件付きのリバースモーゲージについては、決められた使途以外には借入金を使えません。
(3)担保とする物件が条件に合うこと
リバースモーゲージは、一種の不動産担保ローンですから、大前提として担保とする不動産(持ち家)を持っていなくてはなりません。
また、どんな物件でも良いというわけではなく、その担保価値が評価され、審査を受けてはじめて利用できます。
担保価値が乏しいと評価されれば、利用できないこともありますし、融資を受けられる限度額は、担保物件の評価額をもとに上限が決められます。
マンションでもリバースモーゲージは利用できるか
本題の、マンションでのリバースモーゲージ利用について解説します。
マンションのリバースモーゲージはハードルが高い
持ち家ではあるけれども、分譲マンションの区分所有だという場合、この物件でリバースモーゲージを利用できるのでしょうか。
結論から言うと、リバースモーゲージ全般では明確な決まりなどないものの、一般的には難しいと言わざるを得ません。
金融機関によっては対象外と明示しているところもあります。
なぜ、マンションではリバースモーゲージを利用できないのでしょうか。
それは、リバースモーゲージのカギとなる物件の担保価値は、ほとんどが土地の価値をもとに評価されるからです。
分譲マンションの所有権も、敷地には及んでいますが、戸建ての家の敷地のように、家の所有者が自由にできるものではありません。
土地はいつまでも価値がなくならないのに対して、建物は年を経るごとに劣化してその価値は下がっていきます。
そうした理由から、マンションは、金融機関から見て、リバースモーゲージの担保とするには魅力に乏しく、評価額を低くせざるを得ないため、十分な融資ができません。そのため、マンションは対象外とされている場合が多いのです。
「リバース 60」など、マンションでも利用できることも
しかし、リバースモーゲージを、マンションではまったく利用できないというわけではありません。
マンションを受け入れている金融機関もゼロではありません。たとえば、東京スター銀行の「充実人生」や、みずほ銀行の「みずほプライムエイジ」などは、マンションでも申し込み可能なリバースモーゲージです(もちろん審査はあります)。
住宅金融支援機構の「リ・バース60」でもマンションは対象外とはされていないため、チャンスはあると言えるでしょう。
しかし、「リ・バース60」では住宅金融支援機構と、実際の融資を受ける金融機関それぞれで物件の審査が行われますし、審査の基準も戸建てに比べるとそのハードルは上がると思われます。
結果として、融資を受けられなかったり、希望するだけの融資額に達しない可能性もあります。
結局のところ、どのようなマンションなら、リバースモーゲージの担保として受け入れられやすいでしょうか。
やはり、資産価値が十分にあり、価値が下がりにくいことがポイントです。たとえば、
- 比較的、築浅である(築20年以内が目安)
- 大都市圏である
- 駅が近いなど利便性が良い
といった物件は、売却しやすいため、金融機関も高く評価します。
リバースモーゲージが難しい場合、リースバックがおすすめ
最後に、マンション所有者におすすめの資金調達方法を紹介します。
物件に住みながら資金調達をするには?
リバースモーゲージには、利用にあたっての条件がありました。なかでも重要な担保物件の条件は、物件がマンションの場合、非常に厳しいということをお伝えしました。
マンションが受け入れられたとしても、厳しく評価された結果、十分な融資を受けられないのでは意味がありません。
そこで、マンションを所有している人は、リバースモーゲージだけでなく、別の資金調達方法についても検討されるといいでしょう。
不動産を活用した資金調達は、
- 賃貸にして収益する
- 売却する(任意売却)
というのが一般的です。
しかし、これらの方法は、物件を他人に貸したり売ったりするため、その後、自身では住み続けることができなくなります。リタイア後の生活を考えると、こうした方法は不適当でしょう。
ほかに、適切な方法があるでしょうか。
リバースモーゲージ同様に、物件には住み続けながら、資金調達する方法として「リースバック」が第一候補です。
リースバックとは、物件を売却し、資金(売却益)を得たうえで、物件の買い手との間に賃貸契約を結び、以後は賃料を払いながら物件に住み続けるという仕組みです。
リースバックのメリットをリバースモーゲージと比較
リースバックは、一見するとリバースモーゲージに似ていますが、借り入れではないため金利負担がなく、調達した資金は返済の必要がありません。
リバースモーゲージの3つの条件との比較で、リースバックのメリットを考えてみましょう。
(1)相続人も住み続けることが可能
リースバックも、リバースモーゲージと同じく物件を売却することには変わりはありません。そのため、やはり相続人の同意はあったほうがいいのですが、利用者が亡くなった後、はリバースモーゲージと異なります。
リバースモーゲージでは、原則として物件を売却して残債を精算するため、家を手放すことになるのですが、リースバックの場合、すでに物件は売却されており、以後は賃貸として住み続けているという形です。
そのため、相続人は、希望すれば賃貸人としての地位を承継し、そのまま住み続けることが可能です。
(2)調達した資金の用途制限はない
リースバックで得たお金は物件の売却益であり、借入金ではありません。用途制限もありませんので、調達した資金は何にでも使うことができます。
もちろん、今後、その家に住み続けるための賃料にもなりますので、すべてを使い切って良いわけではありませんが、用途制限がないのはメリットと言えます。
(3)物件の条件がゆるやか
リバースモーゲージに比べると、利用できる物件の条件はゆるやかと言えます。
リバースモーゲージで、金融機関が物件を厳しく審査するのは、リバースモーゲージが長期の借り入れになるからです。長期間の借入期間が終わった後に、売却しても十分な利益が出る資産価値のある物件かどうかを、銀行は厳しくチェックします。
対して、リースバックでは、売却した物件はすぐに売り手が借りることが約束されています。つまり買い手から見ると「確実に借り手がいる賃貸物件」であるため、不動産としての資産価値を厳密に評価する必要があまりありません。
もちろん、マンションでも問題なくリースバック可能です。
このように、リバースモーゲージと比較してみると、マンションの場合は、リースバックのほうが有利な面が多いと言えそうです。
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