リースバックとは?【不動産のリースバックを徹底解説】

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不動産模型と電卓

最近、テレビCMなどで耳にする機会が増えたリースバック。

リースバックは、英語で「sale-and-leaseback(セール・アンド・リースバック)」と表記されます。セールとリース、つまり所有物品またはそれに相応する物を貸し手に売却をした後に、貸し手側からその資産をリース物件として借りることを意味しています。

リースバックは不動産に限らず、自動車や列車などの資本財も対象となります。

不動産に限っていえば、自宅を売却して現金を手にした後も、そのまま住み続けることができるサービスのことです。住み慣れた自宅に入居しながら、売却による現金を手にできることから、老後の資産運用などに注目を浴びています。

今回はこの不動産のリースバックについて解説します。

リースバックは、日本ではどのようにして発展してきたのでしょうか。また、2021年現在はどのようなサービスとして捉えられ、今後はどのように発展していくとみられているのでしょうか。

この記事では、リースバックの成り立ちから現在の扱いまで、詳細にみていきます。これらを理解することにより、リースバックの利用を検討する際の判断材料にすることができるでしょう。

住宅リースバックとはどんなサービスか

まずはリースバックの具体的なサービス内容について解説します。

自宅を売却

リースバックを利用する際は、対象となる不動産をリースバックの取扱会社に査定してもらうところから始まります。

事業者に所有する不動産を査定してもらい、価格を提示してもらいます。

提示された金額で合意に至った場合には、売買契約を締結します。決済により現金を手にするかわりに、不動産の所有権が事業者に移転します。

自己所有ではなくなることから、改修工事などを所有者の承諾を得ず行うことはできません。


所有から賃貸へ

売却と同時に事業者との間で賃貸借契約を交わすため、以降は家賃を支払うことになります。

賃貸契約の期間はリースバックの取扱会社により異なります。

通常の賃貸物件の場合と同じように、リースバックの契約期間も2年程度となることが多いようです。

なお、更新料や、場合によっては管理費などが必要となるケースもあります。

契約条項には注意が必要

リースバック契約は「売買契約」と「賃貸借契約」の2つから成り立ちます。

売買契約書には、売買価格・決済(引き渡し)日・買戻し特約に関する事項などが記載されています。ちなみにリースバックは、契約次第で将来的に買い戻すこともできます。買戻しに関する取り決めは、事前に協議して売買契約書に記載しておく必要があります。

賃貸借契約書には、下記の内容が記載されています。

  • 契約の目的
  • 使用目的
  • 契約の種類(定期借家契約か普通借家契約か)
  • 契約期間
  • 賃料
  • 敷金
  • 賃料の支払い方法
  • 賃料の支払い期限
  • 途中解約の方法
  • 退去時の原状回復義務
  • 禁止事項

中でも契約の種類については、それぞれの違いを正確に理解する必要があります。

定期借家契約の場合は、原則として、途中解約が認められません。正当事由なく途中解約を行った場合には、契約内容によっては期間満了までの家賃が請求される場合があります。また、定期借家契約で契約満了後も住み続ける場合には、貸主・借主双方合意のもと再契約をする必要があります。貸主が合意に応じなければならないといった法的根拠は存在しないため、思い込みに注意が必要です。

普通借家契約の場合は、契約更新の意思表示をするだけで住み続けることができます。

リースバックを提供している会社には、利用可否を決める共通の基準が存在します。この基準を最低限満たしていなければ、リースバックを利用することができないと考えておくと良いでしょう。

1.不動産名義人、全ての同意が得られていること

単独名義なら問題ありませんが、複数名義であれば全ての所有者の同意が必要です。

2.家賃の支払い能力があること

借主は取り決められた月々の家賃を、問題なく支払えなくてはなりません。取扱会社によって審査方法は異なりますが、一般的には所得証明や源泉徴収票などにより判断される場合が多いようです。また、高齢者の場合には年金金額などの収入により、支払い可能かどうか判断されます。

3.重大な瑕疵が存在していないこと

建物の重大な欠陥や不具合、またそれ以外にも「事故物件」と呼ばれる事件・事故・自殺など心理的瑕疵の存在する物件は、不可とされるケースが多いです。また、これらの瑕疵が存在しているのに告知をせず、相手側が知らない状態でリースバック契約を行うのはトラブルの原因となります。

契約後に発覚した場合には、動機の錯誤による売買契約解除など法的な争いに発展する可能性があります。

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リースバックの成り立ち

実用的なリースバックについて紹介しましたが、そもそもリースバックはどのようにして生まれたのでしょうか。

より深く理解するために、リースバックが生まれた背景を紹介します。

リースバックの語源

一般社団法人リースバック協議会によると、リースの語源は、古代ローマ帝国時代に船や農地(リースホールド)を、他者に貸し出していたことにあるそうです。その後、時代が移り変わる中で機械や設備も貸し出されるようになり、仕組みが発展していったといいます。

ただし、共通の起源をもつようですが、現代のリース契約とリースバック契約は異なります

日本におけるリース契約の対象は、おもにコピー機などのOA機器や自動車です。利用者の希望商品を購入し貸し出す「ファイナンスリース」の一つに、リース会社が賃貸人の保有不動産を借り受け、事務所などとして賃借人に貸し出すという三者間取引もありますが、いわゆるリースバックではありません。

日本では、政府による積極的な後押しもあり、1960年頃からリース会社の設立が増加したと言われています。認知こそされなかったものの、これに少し遅れるようにして今の「リースバック」が誕生したようです。

実際に私たちが資金調達の方法として目にするようになったのは、2010年以後でしょう。老後資金確保を目的としたリバースモーゲージが、資産処分の解決ができないなどの抵抗感により浸透しなかったことから、その穴埋めをするようにリースバックが脚光を浴びることになったといわれています。

日本のリースバックの現状

東京タワーが見える風景

この数年は特にリースバックが注目を浴び、相談件数が増加しています。ここで日本におけるリースバックについて紹介します。

取扱会社の数はどれくらいか

2021年3月現在、大手から中小企業まで、リースバックの取扱会社数はかなりの数があります。

参入企業の例
企業名 商品名
セゾンファンデックス(クレディセゾングループ) セゾンのリースバック
一建設 リースバックプラス⁺
SBIスマイル(SBIグループ) ずっと住まいる
ハウスドゥ ハウス・リースバック
センチュリー21 売っても住めるんだワン
日本住宅流通(大和ハウスグループ) リースバックサービス
インテリックス あんばい

リースバック事業を取り扱うのに特別な申請や条件はありません。購入資金があり、不動産取引を反復継続して取り扱える会社、つまり宅地建物取引業者であれば、どこでもリースバックを提供することができます。

したがって、今後ますます取扱会社が増加していくとみられています。

リースバックと比較されるリバースモーゲージ

リバースモーゲージは、各都道府県にある福祉協議会や金融機関が取り扱う金融商品の一つです。

大きな違いはリースバックが売却から賃貸への流れであることに対して、リバースモーゲージは自宅に住み続けながら担保として提供し金融機関から融資を受けるということです。

亡くなった際に一括返済をすることを想定していることから、リバースモーゲージは老後資金として利用されることが多いです。利用年齢に制限があるのもそのためです。

融資可能額の上限いっぱいで融資を受けても、月々の利息のみを返済することから、返済計画が比較的容易だといえます。

現状、日本ではリースバックとリバースモーゲージがよく比較されます。以下を参考にしてみてください。

海外ではどのように活用されているか

日本では馴染みが薄いですが、アメリカには「iBuyer」という不動産売却のビジネスモデルがあります。

ユーザーが不動産価格査定アルゴリズムを使用して自己所有不動産の価格査定を行い、不動産会社や不動産ポータルサイトが直接購入をするという取引システムです。イメージとしては、アメリカには、日本の簡易査定システムよりも数段進んだシステムが存在するという認識で良いでしょう。

「iBuyer」から派生して、「EasyKnock」というサービスがあります。「iBuyer」と同じく不動産価格査定アルゴリズムを利用して即座に金額を把握し、それをもとにリースバック契約を成立させるというものです。

すでにリースバックにもAIが用いられているというところが、今認知の段階にある日本との大きな違いでしょう。

活用の目的や事例

リースバックは、具体的にはどのようにして活用されているのでしょうか。

また、トラブルになりやすいポイントも紹介します。

相続負担の軽減

リースバックは、相続を見据えて活用することができる仕組みです。

理由は以下の3つです。

  • 相続財産を現金で遺すことができる
  • 相続税納付で現金不足にならない
  • 相続人がいない場合に空き家にならない

リースバックを活用すれば、相続人が遺産分割で揉めることがないよう、相続財産を現金で遺すことができます。

また、相続の際には税金を現金で納付しなくてはなりませんが、その負担を小さくすることも可能です。さらに、相続人がいない場合には、物件所有者をあらかじめ不動産会社にしておくことで、空き家を増やさず、かつ老後に使うことができるお金を増やすことができます。

住宅ローンの返済

住宅ローンの返済負担がきつい場合には、リースバックを利用して収支を改善することがあります。

ただし、不動産を売却するときは、原則として物件の売却価格がローン残債を上回っていなければなりません。もしローン残債のほうが多い場合には、債権者の許可を得て売却を進める任意売却がリースバックと併用されることもあります。

リースバックに関するトラブル

リースバック契約では、賃貸借期間を原因としたトラブルが見受けられます。

例えば、更新料の有無や更新可否などを理解せず安易に契約を締結してしまい、退去せざるを得なくなるケースです。法律的には契約条項が優先されるため、利用者は不利益を被ったと感じ、揉め事となりうるのです。

定期借家契約による契約更新については、事前の協議と契約書面の記載を必ず確認しましょう。

リースバックに対する国の見解

リースバックが国内で浸透し始めたことを受けて、国(政府)はどのような対応をみせているのでしょうか。

悪質な業者に注意を促す声もある

リースバックの有用性とは裏腹に、利益優先の一部業者による問題が多発しています。

有識者による意見交換会である「第50回社会資本整備審議会住宅宅地分科会」では、以下のような意見もでています。

「最近は悪質な業者も含めてリースバックを扱う業者が増えている。高齢者がリースバックの業者に住宅を売却するということは、居住の安定性の観点から非常に危険な側面もある。その理由として、高齢者を含む一般の居住者が不動産の賃貸・売買に対して知識がないことや事業者の説明不足などが考えられる。住宅政策として考える際には、リースバックにおける現状の課題などを整理しておくべき」

それを受け国は、リースバックの有用性を容認しつつも、対策に動いています。

国のガイドライン

知識格差により貸主(リースバックを提供する事業者)有利に契約が締結され、売買価格が不当に安く設定されるなど問題が頻発したことを受け、国はリースバックの売却価格の決め方などを含めたガイドラインを、令和2年にまとめるとしていました。狙いは、共通ルールを策定することにより牽制し、リースバックの諸問題を解消し、安全に利用できるようにすることです。

しかし国土交通省に確認を取ったところ、2021年3月現在、ガイドラインの策定は遅れているようです。当初令和2年を目標としていた具体的なガイドラインについては、国土交通省のホームページでの公表に至るほど、進捗を見せていないようです。

また、リースバックに関するガイドラインに関連する情報は、政府広報からも確認することができません。現時点での最新情報は、平成30年にまとめられた「公的不動産(PRE)の民間活用の手引き」にあります。

空き家問題とリースバック

日本において不動産を管轄するのは国土交通省です。国交省は、国の重要課題として既存住宅の活性化・空き室利用の促進を掲げています。

国土交通省は、従来は売る・貸す・壊す・直すといった活用促進が空き家問題を解消していく方法としていましたが、現在はリースバックを課題解決のための新たな手法であると位置づけています。

具体的な動きとして、令和2年1月10日に「リースバック事業に関する最新動向アンケート」を実施しています。このような動きを通して、既存のリースバックの活用状況や、問題点の把握を進めているようです。

今後の展望

まず、取り扱える業者が限られるリバースモーゲージに代わって、参入障壁の低いリースバックは広がりをみせていくと予想されます。

市場競争が活性化されれば、少しでも良い条件で契約できる可能性も高くなり、利用者にとってのメリットも大きくなるでしょう。

当サイトのような簡単にリースバックの条件を比較することができるサービスも、今以上に便利になります。

また、国土交通省などの取り組みにより、一部の業者による不当に安い買取金額や、知識格差を利用した借家契約のガイドラインが整備されていくことも期待できます。現在は、契約する会社の見極めも慎重に行う必要があるリースバックですが、今後はより気軽に利用することができるのではないでしょうか。もしかすると、近い将来アメリカのように人を介さず、リースバックを利用できる時代がくるかもしれません。

安心して利用することができるようになれば、以下のような資金が不足した際にも、積極的に活用できるようになるはずです。

積極的なリースバック活用には、安心して利用できる環境が不可欠でしょう。

リースバックは非常に画期的な仕組みです。正しく活用できれば、私たちの選択肢が広がることは間違いありません。

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